食後30分に30分歩いても血糖値は下がらないんですよね。
- 糖質制限
以前、お昼に行きつけのカフェで食べた日替わりランチをツイートしたことがあります。
こんな感じ。
『厚切りポークソテー。
付け合わせのポテトは、流石にご愛嬌と言う訳に行かないので、食後30分から1時間速歩で歩きました(笑)
残せばいいなんて人が時折いますが、食べ物を残すのは最低の行為だと思ってるので、余程でない限り残しません。』
ポークソテーも厚切りでボリューミーだったのですが、添えてあるフレンチフライもチョモランマ級の巨盛りでした(笑)
フライドポテトって、思いっきり血糖値上がるんですよ。
なもんで、1時間気合が入れて歩いたのですが、このツイートを見られた方から、
「やっぱり速足の方がいいんですかね? 普通に歩いても歩いた感あるんですが」
とリプをいただきました。
いやいや、「歩いた感」と「血糖値が下がった」は全く別の話です。
一般的に糖尿病で診察を受けると、ドクターから
「食後30分に30分歩きましょう」
なんて言われることがあります。
「歩きましょう」すら言わないドクターもいますが(笑)
なので、普通に歩けば大丈夫と思ってらっしゃる方、結構多いです。
ドクターも運動療法に詳しい方ばかりではないので、患者と同じく普通に30分歩けばいいと思ってる方が多いですね。
この「食後30分に30分歩きましょう」は、日本糖尿病学会が「食後30分に30分の運動」を推奨してることから来てるのですが、何も考えず、検証すらせず受け売りして患者に伝えてます。
実際にテレビの健康番組では、
「少し運動するだけで効果あります」
とか
「週に1〜2回の運動でも血糖コントロールに有効です」
とか言ってる糖尿病専門医の方を見かけますしね。
ところが、ですわ。
「普通に30分歩けば効果がある」どころか、症状や血糖コントロールの状態によっては、早足で歩いたって効果がないんですよね、これが。
もう10年以上前の話ですが、2009年、東海大学の大櫛陽一先生が運動と血糖値について被験者を集めて実験をされまして、私、コーディネーターを務めさせて頂きました。
糖尿病の患者様にご協力いただき、通常のカロリー制限食と糖質制限食、運動あり、なしで食後血糖値の変動を調べました。
運動は、糖尿病の運動療法として推奨されている、「食後30分から30分間、速足で歩く」です。
この実験の結果ですが、結論から言えば、それまで巷間言われて来た程の効果は出ませんでした。
どういうことか?
標準体重で、普段から血糖コントロールができてらっしゃる方は、糖質60%のカロリー制限食を食べて血糖値が上がっても「食後30分に30分の運動」で正常値まで血糖値が下がりました。
ですが、太っていて普段の血糖コントローが出来ていない方の場合、ほぼ血糖値は下がりませんでした。
なので、上記のような「少し運動するだけで効果あります」とか「週に1~2回の運動でも血糖コントロールに有効です」は、もしかしたら発症してない方の予防には効果があるかもですが、予備軍や境界型、2型を発症してしまった方には、殆ど効果がない、ましてや2型糖尿病の多くを占めるであろう「血糖コントロールが出来ていなくて太っている人」には、なんの効果も期待できません。
実際に私が血糖測定実験していても、糖質を食べて血糖値が150mg/dl超えた場合なんか、普通に30分歩いただけでは10mg/dlも下がりません。
けっこう気合入れた速歩で歩いて、30分で30mg/dl下がる、60分歩いて100mg/dl 切るかなと云ったところです。
肩の手術をしてから全然運動できていませんが、元プロのスポーツ選手で同年代に比べて筋肉量が多くて、今でも腹筋が8つに割れてるくらい絞ってて、且つ、普段は糖質制限で血糖コントロールしている私ですらこんな感じです。
普段から全く運動してなくて筋肉量が少なくて体を絞ってもいなくて血糖コントロールもできていない大多数の糖尿病患者の方が、「少しの運動」やら「週に1~2回の運動」で効果があるとは全く思えません。
つまるところ、このような主張をされる方々は、実際に自分でやってみたり患者さんでデータ集めたりしてないんでしょうね。
先程も書いた様に、誰かの言ったことをそのまま受け売りしてる訳です。
これが、どうでもいいような内容を受け売りで話すならなんの害もありませんが、少なくとも命の掛かっている病態の方を相手に誰かの受け売りっていうのは、正直如何なものかと。
公共の電波で「効果あります」って言い切るなら、せめて実証実験くらいはやってから言いましょうよと思うのは、私だけですかねぇ。